筆の歴史
1954年に中国湖南省長沙(ちょうさ)市で発掘された竹製の行李(こうり)の中に、筆筒に入れた筆が発見されました。この墓は秦に滅ぼされた楚の国の墓であるところから、この兎毫(とごう、兎の毛)の「長沙筆」が現在判明している最古のものといわれています。
ですが、殷代(前16~前13世紀)の亀甲獣骨文とともに発掘された白色土器に、毛筆でなければ描けないと思われる文様があったり、甲骨文の中には銅刀で文字を刻み込む前に毛筆で下書きしたと思われるものもあります。又、更に古い新石器時代末期の彩陶の文様も筆で描かれたと推定され、これによれば毛筆の起源は前2500年以前にまで遡ることになります。
日本の筆は中国、朝鮮から伝えられ、5世紀ごろにはすでに使われていたものと推察されますが(「日本書紀」に4世紀末来朝の百済の王仁(わに)が「論語」10巻、「千字文」一巻を進貢したとみえる)、7世紀初頭、高麗僧により紙墨の製法がもたらされていることから、製筆法もほぼ同じころ招来されたものと思われています。
毛筆の原料
①羊毛
綿羊でなく江南(揚子江の南)に棲息する山羊である。山羊は、二十種類以上いるといわれ、それぞれ持ち味が異なる。粘りのあるものからサバサバした物まで丈けが長く、先が良く利き、墨含み良い。高級品から並品まで広く使用されるが、中でも背首付近を溜めて造る細光鋒は、最高級品である。
②馬毛
馬胴毛、尾脇毛(天尾)、たてがみ、脚毛、つり毛などで、白毛、赤毛、青毛、葦毛で、日本では、東北の米沢付近、その他では、中国の天津、朝鮮、北米、中南米である。毛が剛強で、尾脇毛では一種類の毛質で筆が造られるが、胴毛は小筆の芯に用いられる。
また、化粧毛にされる毛もある。馬毛は、毛の丈が長く腰が強いので長鋒を造るのに適している。
③鹿毛
鹿毛は、夏・冬どちらも良いのが特徴で、ことに冬毛の脇下から下腹部へかけての真白は、優れていて、その長い物を゛真走り゛といって太筆の原料としている。鹿毛は、ふくらみが毛自体にあり、水含みが良く、弾力があるので芯や中程より根元に使用される。日本、中国、インド、タイなどにいる。腰は強いが耐久性に乏しい。
④狸毛
狸毛は、一匹の中でも場所によって十種類以上に分類され、品種も多い。
白狸に、白一・白二・白三、黒狸に、黒一・黒二・黒三、尾に、黒尾・裏白尾・両毛・肩毛などと遊ばれている。日本産の白一を上質としている。つまり生えているところによって、毛の質、弾力が異なる。狸毛は根の部分が細く、先端になるにつれて太くなるのが特徴で、毛先は弾力があり丈夫である。根本になるほど腰が弱くなっている。そのために、狸毛には腰の強い毛を混ぜ、穂の腰を補強する必要がある。
中国・朝鮮などの狸は、毛が硬く太筆に使用され、日本産のものは柔らかく味があり、小筆に使用される。また、先が弾力に富んでいるので剛毛筆の命毛に用いられる。
⑤鼬毛
鼬の毛は、毛が、短いので小筆が中心となる。先が良く利き毛の弾力も強く水含みがよい。欠点は摩擦による消耗率が高い。高級品に用いられ、日本・中国・韓国に生息する。
⑥猫毛
猫毛も毛が短いので小筆が中心となる。「玉毛」ともよばれる猫毛は、綿毛が多いので、穂に適した硬毛を選び出すのはなかなか困難なことである。最も毛質の良いものは、走り毛といわれる背筋、肩の毛である。一匹から五グラム位といわれている。
猫は2年半以上たったものでないと毛が使い物にならない。毛質は、粘りがあり、先が良く弾力に富んでいるので、面相筆、極細字筆などに用いられている。日本で産出する。
⑦兎毛
古い時代に親しまれた毛であるが、今日では極少量が羊毛と混ぜて使われる程度である。毛先が良く利き、弾力に富んでいる。綿毛が多いため選毛に手間がかかり、製筆の特殊技術の上から考えるとコスト高となるためである。
中国では、「紫毫」といって、日本産の兎より弾力がある野兎の肩毛を主に用いている。混じりけのないものを純紫毫といい、配合率によって「五紫五羊」、「七紫三羊」などといっている。宜州漂水県といって安徽省の東部にあたるところで産出している。日本では、純紫毫は採れない。
以上が毛筆で一般的に使われている動物の種類や特徴ですが、上記以外にも様々な動物の毛が使われています。安価な物から高価な物、太さや長さの違いによって、書道家作風によって好みの筆を使い分けますが、本學院では初心者の方には、価格も手頃で柔らかすぎず固すぎない馬毛の筆をオススメしております。同じ紙や墨を使っても筆の毛質や長さ・太さによって作風が大きく変わるので、様々な筆を使ってみて、自分に合った筆を見つけると良いでしょう。
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